「真夏の果実と、旅の記憶」

人生の棚卸し

私は、20代の頃、オーストラリアに行きました。
ワーキングホリデーという名前の、ちょっとした冒険。
不安もあったけれど、どうしても旅に出てみたかった。
なにかを変えたかったし、なにかを知りたかった。

現地で車をレンタルしバスや寝台列車も使用しながら、友人と一ヶ月かけて大陸を一周する旅行に出かけたのです。
真っ直ぐでどこまでも続く道、
赤く染まった大地、夕暮れの風。
あの時間が、静かに自分を整えてくれていた気がする。


日本の曲ばかり入れたカセットを何本も積んで、
繰り返し流しながら移動しました。
その中にあったのが──サザンオールスターズの「真夏の果実」。

遠い国の空の下でこの曲を聴くと、
胸の奥がじんとあたたかくなる。
少し寂しくて、でも安心する。
旅先で聴く日本語の歌って、
どうしてあんなに沁みるんだろう。

それから年月が過ぎて、今年。
なんとツアーチケットが当選しサザンの全国ツアーに行ったのです。
場所は沖縄。
当日まで座席はわからず会場についてチケットを見ながら座席を探すと何とアリーナ、前から5列目。
そんなことって、本当にあるんだなと。最高すぎる!

ステージに立つ桑田さんを見ながら、
胸がいっぱいになって、思わず「桑田さーん!」ってずっと叫んでました。
あの頃の自分に、見せてあげたかった景色。

そういえばあのときも、今も、
同じ声を聴いてるんだなって思った。
そして、私は変わったものもあるし、
変わらないものもある。

サザンの曲は、
わたしの人生のいろんな場面にそっと寄り添ってくれている。
きっと、これからも。

今では子どもたちもサザンを口ずさむようになって、
それがなんだか、うれしくて。
時代も場所も違うけれど、
同じ音楽が、心のどこかでつながってる。
それって、いいなと思う。

「真夏の果実」は、
旅と記憶のあいだに、ずっと流れているのです。
何も言わなくても、ちゃんと覚えてくれてる。
だからきっと、これからも何度も聴くし、また、あの空のことを思い出すのでしょう。

忘れたくない風景には、いつも音楽がそばにいる、と思いませんか。

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